【盲腸・虫垂炎】腹腔鏡下虫垂切除術の手順書【手術室看護師監修】

こんにちは。看護師のけいです。

新人手術室看護師のみなさん、職場の雰囲気には慣れてきましたか?いろいろと大変だとは思いますが、頑張ってください。

本日は、腹腔鏡下虫垂切除術について記事にしていきたいと思います。 これから手術に入っていく新人看護師さんの学習時の参考になれば幸いです。 

 

虫垂炎とは

虫垂炎とは、盲腸に付随する虫垂と呼ばれる細長い器官が炎症を起こす病気です。一般的に「盲腸炎」と呼ばれますが、正確には虫垂の炎症が原因です。

発症原因としては、便や異物が虫垂に詰まり、炎症が引き起こされることが多いです。

症状としては、突然の腹痛が典型的で、最初はみぞおちやへその周辺に痛みを感じ、その後右下腹部に痛みが移行します。加えて、悪心や嘔吐、発熱が伴うこともあります。

虫垂炎の治療方法としては、主に外科的切除(虫垂切除術)が行われます。手術は緊急性が高い場合が多く、早期の診断と対応が必要です。

術後は患者の腹部痛や感染症のリスクを注意深く観察し、適切なケアを提供することが重要です。

 

術後管理

腹腔鏡下虫垂切除術は、一般的に回復が早く、術後管理も比較的シンプルです。

術後は、痛みの管理が重要であり、疼痛コントロールを適切に行いましょう。患者が早期に歩行を開始できるよう、動ける範囲での活動を促すこともポイントです。

また、術後のガス排出(排ガス)が回復の指標となるため、食事開始前に確認が必要です。水分や軽い食事を少しずつ摂取させ、嘔吐や腹部膨満がないか観察します。

 

合併症

主な合併症には、感染症、腸閉塞、出血、傷口の癒合不全があります。術後の発熱や創部の発赤、腫れ、痛みが見られた場合は感染の兆候としてすぐに報告し、対応を行います。

腸閉塞が疑われる場合は、腸の音や排便状況を確認し、異常があれば早期に医師に連絡することが重要です。

出血の徴候としては、血圧低下や脈拍増加、皮膚の蒼白などが挙げられるため、これらのサインにも注意を払いましょう。

術後管理と合併症の予防に努め、適切なケアを提供することで患者の回復を支援します。

 

 

腹腔鏡下虫垂切除術の手順

 ここからは、私が新人手術室看護師時代に自己学習用に作成した、腹腔鏡下胆嚢摘出術の手順書を掲載します。 私個人の自己学習記録です。手術操作、各看護師の役割など、執刀医や施設によって異なる可能性がありますので、あくまでも参考程度にしてください。

 

※パソコンモニターでの閲覧を推奨します

手術の展開 必要器械   手術操作 直接介助 間接介助
消毒 イソジン綿球
No30
消毒鉗子2本
消毒缶
イソジン液で両乳頭を結んだ線から両大腿までの腹部を消毒する。     無影灯を点灯する。
   
   
   
   
術野被覆 ラパコレシート
電メス
カメラヘッド
光源コード
気腹チューブ
排煙チューブ
腹腔鏡用電メスコード
ソフト凝固
ライトハンドル
ガーゼ
保温水筒
(ハーモニック)
ラパコレシートを掛ける。
以下器械を接続する
・気腹チューブ
・排煙チューブ
・カメラヘッド
・光源コード
・腹腔鏡電メスコード
・電メス
・ソフト凝固
それぞれ固定する。
・ハーモニック必要時出す
ライトハンドルをセットする。
メーヨー板にカバーを掛け、ラパコレシートを渡す。
以下順に渡す
・気腹チューブ
・排煙チューブ
・カメラヘッド
・光源コード腹腔鏡電メスコード
・電メス
・ソフト凝固
・ライトハンドル

ハーモニック使用の有無をDrに確認。
必要時出す

水筒・白カップを立てて、温生食を貰う
ラパコレシートのサイドを受け取り、頭側の点滴スタンドに固定する。

降りてくるデバイス類を受け取り各装置へ接続しスイッチを入れる。

水筒に生食を入れる。

キックバケツを配置する。

電メスのフットスイッチを執刀医の足元に置く。

排煙フットスイッチを直介の足元へ置く。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ホワイトバランスの調整

タイムアウト
ガーゼ カメラの先端にガーゼを当て、ホワイトバランスをする。
ホワイトバランスの後、手術伝票をカメラで録画する。
クリアファイを準備する。 光源装置を起動し、ホワイトバランススイッチを押す。
DVD、HDの録画開始ボタンを押し、手術伝票を録画する。
トロッカー
挿入・気腹・
カメラ挿入
メスNo11
有鉤セッシ
コッヘル
電メス
ペアン
筋鉤
EZアクセス
ラッププロテクター
EZトロッカー3本
5mmカメラ
コッヘル2本で臍をつまみ上げメスNo11で臍部の皮膚に小切開(臍縦切開)を加え、電メスと筋鉤、ペアンで創を拡大しながら腹膜に至り、メスNo11で切開し開腹する。腹膜をコッヘルで把持し、ラッププロテクターを挿入する。
EZアクセスにトロッカー3本挿入し、ラッププロテクターに装着する。
トロッカー(活栓あり)に気腹チューブ、排煙チューブを接続し、気腹を開始する。カメラを挿入し、腹腔内の観察をする。
術中体位の調整をする。
体位調整中、器械台やメーヨー台が患者の体や手術台へ接触していないかを注意する。 指示にて気腹開始。
気腹はハイフロー
気腹圧は10に設定
これを超えないように。

気腹開始時間を記録。

執刀直後のバイタルサインおよび一般状態を観察する。腹腔内への炭酸ガス送気に伴うバイタルサインの変動に注意する。

指示にて手術台を調整する。
手術台のローテーションによるコード、チューブ類の接続の抜けや断線、患者の体がメーヨー板等に接触していないかに注意する。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
腹腔内精査 剥離鉗子
(メリーランド)
腸鉗子(有窓曲)
腹腔内を検索、虫垂の同定をする。   無影灯を消す。
虫垂および虫垂間膜の露出 剥離鉗子
(メリーランド)

腸鉗子(有窓曲)
大網や後腹膜から虫垂を剥離、虫垂間膜を進展させながら手術しやすい位置に移動する。    
虫垂間膜の切離 剥離鉗子(メリーランド)
腸鉗子(有窓曲)
ハーモニック
剥離鉗子で虫垂間膜を剥離し、ハーモニックで切除する。 ハーモニック、電メス使用時は、排煙フットスイッチを踏む。
ハーモニック、電メスの先端をきれいにしておく。
   
   
   
   
     
     
     
虫垂の切除 <体内処理>
エンドループ×2
カーブシザーズ
<体外処理>
3-0VIC CR(J772D)
3-0VIC (J104)
へガール持針器
エンドループを虫垂根部に2重にかけ、その間をカーブシザーズで切離する。
(EZアクセスの蓋を外し虫垂を腹腔外に出し、開腹時同様にタバコ縫合を掛け切離する場合や、ハーモニック、エシュロンで切離する場合あり。)
エシュロン使用時は、エシュロンを受け取り、カートリッジを本体にセットし渡す。 エシュロン使用時、エシュロン本体と、指示のサイズの替え刃を渡す。
虫垂摘出 腸鉗子(有窓曲)
(綿球No20、コッヘル)
切離した虫垂を腸鉗子で把持しておき、EZアクセスのふたを外し、虫垂を摘出する。
腹腔外で摘出した場合、No20綿球で虫垂切除部をイソジン消毒する。
虫垂摘出後、ラッププロテクターに再度EZアクセスを装着し、気腹を再開する。
摘出した虫垂を受け取り、間接介助に渡す。 気腹を止める。
無影灯を点灯する。
摘出した虫垂を受け取り、生食で浸したガーゼで覆っておく。重さを記録する。
炭酸がガスの脱気によるバイタルサインの変動に注意する。
指示にて気腹を再開する。
無影灯を消灯する。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
腹腔内洗浄・止血確認 ソフト凝固 腹腔内の洗浄をし、止血確認をする。
(炎症がひどくなければ洗浄をしない)
出血があれば、ソフト凝固で止血する。
    洗浄前に、吸引出血量の確認。洗浄用生食の残量を確認し、必要時追加をする。
   
   
   
   
   
*必要時
ドレーンの挿入
剥離鉗子(メリーランド)
腸鉗子(有窓曲)
指示のドレーン(J-Vac、プリーツドレーン)
マッチュウ持針器
角5針
2-0ナイロン糸
有鉤セッシ
クーパー(曲)
ドレーンを挿入し、剥離鉗子でドレーンを把持し適切な位置に誘導する。(右下腹部)
2-0ナイロン糸でドレーンを固定する。

*ドレーン挿入しない場合もあり。
指示のドレーンを受け取る。 指示に応じた種類・サイズのドレーンを補充する。
ドレーンの挿入部位を確認し、記録する。
 
 
 
 
 
 
EZアクセス、ラッププロテクター抜去     腹腔内出血の有無およびガーゼ、器械類の残存がないことを確認する。気腹を解除し、EZアクセス、ラッププロテクターを抜去する。 ガーゼ、器械、針カウントを間接介助とともに行う。 ガーゼ、器械、針カウントを直接介助とともに行い、医師に報告する。
指示にて気腹を解除し、終了時間を記録する。
光源、カメラ装置の電源を切る。
録画を停止する。
無影灯を点灯する。
   
   
   
   
   
   
     
     
     
     
閉腹 0バイクリル(J603H)
4-0PDS(Z507G)
有鉤セッシ
アドソンセッシ
筋鉤
コッヘル
クーパー曲
ダイヤモンドマッチュー持針器
ダイヤモンドへガール持針器
10ccシリンジ
23G針
0.75%アナペイン10ml
コッヘルで腹膜を把持し、ダイヤモンドマッチュー持針器0PDSplus(PDPB340D)で腹膜、筋膜縫合。
0.75%アナペインを創部注入する。
ローテーションをし、自在鉤で洗浄液が漏れないようにし、皮下を洗浄する。
ダイヤモンドへガール持針器、アドソンセッシ、4-0PDS(Z507G)で皮下を縫合。

イソジンをハイポでふき取る。
(SSテープ使用する場合あり)
アナペイン必要時受け取り、10ccロックシリンジに吸い上げ、23G針を付けておく。 アナペインを補充する。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
創処置 テガダーム小
No20綿球
20mlシリンジ
23Gカテラン針
ガーゼ付オプサイト×3
ハイポ綿球No30
*ドレーン挿入時、ビジブル小、テガダーム大
(ドレーン挿入時、ドレーン部にY字に切り込みを入れたビジブル小を貼り、その上にテガダーム大を貼る。
臍部はNo20綿球をあて、テガダーム小を貼る。20mlシリンジでテガダーム内のエアー抜きをする。
その他の創部にガーゼ付オプサイトを貼る。
イソジンをハイポで拭き取る。
テガダーム貼用後、ハイポでイソジン液を落とし、乾いたガーゼで拭く。
ドレーン挿入時、ドレーンバッグをドレーンと接続する。
ドレーン挿入時、ビジブルにY字に切れ込みを入れておく。
テガダーム貼用後、ハイポでイソジン液を落とし、乾いたガーゼで拭く。
皮膚の観察を行う。
ドレーンをシルキーテックスでΩ貼りをする。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

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【免責事項】
この記事は、あくまで私の個人的な自己学習記録をもとに、新人手術室看護師に向けて、手術操作について参考程度に記述したものです。施設ごとに使用物品、手順が異なる可能性もあるので、各施設基準に従ってください。また、新人看護師への助言・指導を目的としており、医療的なアドバイスではありません。この情報に基づいて行われた行為の結果については、一切の責任を負いかねます。